1人社長の会社で経理が増えてくると、「経理担当者を採用するか」「バックオフィスを外注するか」が次の課題になります。月額料金だけを見ると外注の方が安く見えますが、社員と外注では任せられる範囲、勤務時間、指揮命令、継続性が異なります。
この記事では、経理担当者を1人採用する場合とバックオフィス代行を利用する場合の費用を、2026年時点の公的データと具体例を使って比較します。
最終確認日:2026年8月14日
経理担当者を採用する費用は給与だけではない
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」によると、経理事務のハローワーク求人賃金は、2026年3月の全国平均で月25.4万円です。就業者の賃金(年収)は全国平均512.2万円ですが、年齢や経験、地域、企業規模によって差があります。
採用時には、給与のほかに次の費用を見込む必要があります。
- 健康保険・厚生年金保険等の会社負担
- 労働保険料
- 賞与、通勤手当、残業代
- 求人広告・人材紹介等の採用費
- パソコン、会計ソフト、備品、作業場所
- 教育・引継ぎにかかる時間
- 有給休暇、休職、退職時の代替体制
厚生年金保険料率は18.3%で、事業主と従業員が半分ずつ負担します。健康保険料も原則として労使折半です。したがって、会社の負担額は額面給与だけでは判断できません。
参考:厚生労働省「job tag 経理事務」、日本年金機構「厚生年金保険の保険料」、協会けんぽ「令和8年度の保険料率」
月給25.4万円で採用する場合の概算
| 項目 | 概算 | 考え方 |
|---|---|---|
| 給与 | 年間304.8万円 | 25.4万円×12か月 |
| 会社負担の社会保険・労働保険 | 年間約45万~50万円 | 年齢、地域、標準報酬月額等により変動 |
| 採用・設備・教育等 | 会社ごとに異なる | 求人、紹介料、PC、ソフト、引継ぎ等 |
| 合計 | 年間約350万円以上 | 賞与・手当・残業・採用費等を除く概算 |
これは全国の求人賃金を使った一例です。経験者を採用する場合、賞与を支給する場合、人材紹介会社を利用する場合は、年間負担がさらに増えることがあります。
バックオフィス代行を利用する場合の費用
新星パートナーズのつばめバックオフィスは、代表者1名・従業員なしの法人を対象に、freee会計・freee人事労務を使って日常経理から給与、税務までをまとめて支援するサービスです。
| プラン | 月額 | 年間 | 仕訳数 |
|---|---|---|---|
| ライト | 40,000円 | 480,000円 | 月50仕訳まで |
| スタンダード | 50,000円 | 600,000円 | 月200仕訳まで |
月額には、会計入力、給与計算、年末調整、法定調書、決算・法人税申告、消費税申告など、契約範囲の業務が含まれます。ただし、仕訳数の超過、従業員の追加、関与開始時期、不動産売買の仕訳、データ移行などは別途料金となる場合があります。
採用とバックオフィス代行の比較
| 比較項目 | 経理担当者を採用 | バックオフィス代行 |
|---|---|---|
| 年間費用 | 給与・会社負担分等で約350万円以上が目安 | つばめの場合48万円または60万円+追加料金 |
| 対応時間 | 勤務時間内に継続して対応 | 契約した業務とスケジュールに基づき対応 |
| 指示の出し方 | 会社が日常的に指示できる | 契約範囲・提出期限・連絡方法を事前に決める |
| 業務範囲 | 能力と雇用契約に応じて幅広く任せられる | 契約で定めた定型業務が中心 |
| 専門性 | 採用する人の経験に左右される | 会計・給与・税務を役割分担して支援 |
| 欠勤・退職 | 社内で代替要員や引継ぎが必要 | 外注先が継続体制を整える |
| 社内知識 | 蓄積しやすい | 会社側が内容を確認しないと残りにくい |
| 規模拡大への対応 | 社内業務を柔軟に増やしやすい | 業務量に応じて契約変更・追加料金が必要 |
費用差だけで「外注の方が得」とは限りません。社員は、請求、入金管理、支払準備、社内連絡、資料作成など、契約で細かく定めにくい業務にも日常的に対応できます。外注は、決められた範囲を安定して処理する仕組みに向いています。
採用が向いている会社
- 経理・総務の仕事が毎日あり、1人分の業務量がある
- 社内で即時対応が必要な請求・支払・顧客対応が多い
- 経理以外の総務、営業事務、管理業務も任せたい
- 会社独自の複雑な業務や承認手続が多い
- 社内に業務知識を蓄積し、将来の管理部門をつくりたい
バックオフィス代行が向いている会社
- 経理担当者を1人雇うほどの業務量はない
- 社長が経理に時間を取られ、本業へ集中できない
- 会計入力、給与、年末調整、申告を一つの窓口へまとめたい
- freeeを使って紙や手作業を減らしたい
- 採用・教育・退職のリスクを抑えたい
パート採用や業務の一部外注も選択肢
フルタイム社員と全面外注の二択ではありません。社内の請求・支払業務は短時間のパート担当者が行い、会計入力・給与・税務は外注する方法もあります。また、自社でfreeeへ入力し、会計チェックと税務相談をふくろうクラウド顧問へ依頼する方法もあります。
日常経理は自社で完結し、決算・申告のみ必要な会社には、はやぶさオンラインが選択肢になります。
判断前に業務量を数える
採用か外注かを決める前に、1か月の業務を一覧にします。
- 領収書・請求書の件数
- 会計の仕訳数
- 請求書の発行件数
- 振込・経費精算の件数
- 給与計算の人数
- 社内からの質問や突発対応の回数
- 社長が現在使っている時間
定型的で月ごとの量が読める業務は外注しやすく、社内で毎日判断が必要な業務は採用に向いています。業務量が少ない段階では外注で仕組みを整え、会社の成長後に採用へ切り替える方法もあります。
まとめ
経理担当者を採用すると、社内で幅広い業務へ柔軟に対応できますが、給与だけでなく社会保険、採用、教育、設備、欠勤・退職への備えが必要です。月給25.4万円の例でも、賞与や採用費等を除いた年間負担は約350万円以上が一つの目安になります。
バックオフィス代行は、社員と同じ働き方をするものではありませんが、業務量がまだ少ない1人法人にとって、必要な経理・給与・税務を定額で整える選択肢になります。年間費用だけでなく、任せたい業務、社内で必要な対応速度、将来の管理部門づくりまで含めて比較しましょう。
新星パートナーズ会計事務所
代表・税理士 井河 伸郎
税務・会計に関する記事は、専門家の立場から内容を確認しています。
本記事は、一般的な情報の提供を目的としています。個別の取引や税務上の取扱いについては、契約内容や事実関係によって判断が異なる場合があります。また、掲載内容は記事作成時点の情報に基づいています。最新の情報は、各サービスの公式サイトや関係機関の公表資料をご確認ください。

