2026年4月1日以後に開始する事業年度から、「防衛特別法人税」が適用されます。
法人税に関連する新しい税金ですが、すべての法人に納税額が発生するわけではありません。年500万円の基礎控除が設けられているため、多くの中小企業や1人法人では、当面の納税額が0円になる可能性があります。
ただし、納税額が0円でも、原則として防衛特別法人税の申告は必要です。
この記事では、防衛特別法人税がいつから始まるのか、税額をどのように計算するのか、中小企業や1人法人にどのような影響があるのかを解説します。
最終確認日:2026年8月22日
防衛特別法人税とは
防衛特別法人税は、防衛力強化に必要な財源を確保するために創設された法人向けの税金です。
各事業年度の所得に対する法人税を課される法人が、納税義務者になります。そのため、株式会社や合同会社など、一般的な事業会社は制度の対象です。
ただし、「制度の対象になること」と「実際に納税額が発生すること」は同じではありません。
防衛特別法人税には年500万円の基礎控除があるため、基準となる法人税額が500万円以下であれば、原則として防衛特別法人税の納税額は0円になります。
いつから適用される?
防衛特別法人税は、2026年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
ここで注意したいのは、「2026年4月1日以後に終了する事業年度」ではなく、「2026年4月1日以後に開始する事業年度」が対象になることです。
通常の1年決算法人では、最初に対象となる事業年度は、おおむね次のようになります。
| 決算月 | 最初に対象となる事業年度の例 |
|---|---|
| 3月決算 | 2026年4月1日~2027年3月31日 |
| 6月決算 | 2026年7月1日~2027年6月30日 |
| 9月決算 | 2026年10月1日~2027年9月30日 |
| 12月決算 | 2027年1月1日~2027年12月31日 |
| 1月決算 | 2027年2月1日~2028年1月31日 |
| 2月決算 | 2027年3月1日~2028年2月29日 |
たとえば、2026年3月31日以前に開始した事業年度は、決算日が2026年4月1日以後であっても、防衛特別法人税の課税対象にはなりません。
設立初年度や決算期を変更した法人など、事業年度が1年未満の場合は、個別に適用時期を確認する必要があります。
防衛特別法人税の計算方法
一般的な法人の場合、防衛特別法人税は、おおむね次の算式で計算します。
(基準法人税額-年500万円の基礎控除額)×4%
計算結果が0円以下になる場合、防衛特別法人税の納税額は原則として発生しません。
簡単な計算例
| 基準法人税額 | 計算 | 防衛特別法人税額 |
|---|---|---|
| 300万円 | 500万円以下 | 0円 |
| 600万円 | (600万円-500万円)×4% | 4万円 |
| 1,000万円 | (1,000万円-500万円)×4% | 20万円 |
ここでいう「基準法人税額」は、申告書上の最終的な法人税納付額と必ずしも一致しません。
所得税額控除や外国税額控除など、一部の税額控除を適用しないで計算するため、実際の税額は法人税申告書に基づいて確認する必要があります。
また、事業年度が1年未満の場合は、年500万円の基礎控除額を月数に応じて計算します。単純に500万円を控除できるとは限りません。
中小企業・1人法人への影響
防衛特別法人税には、資本金や従業員数による一律の免税制度が設けられているわけではありません。
中小企業や1人法人であっても、法人税を課される法人であれば制度の対象です。
一方、年500万円の基礎控除があるため、基準法人税額が500万円以下の法人では、防衛特別法人税の納税額は原則として0円になります。そのため、利益規模が比較的小さい法人では、すぐに税負担が増えるとは限りません。
ただし、「1人法人だから対象外」「資本金が小さいから申告不要」という制度ではありません。1人法人であっても利益が大きく、基準法人税額が500万円を超えれば、防衛特別法人税が発生する可能性があります。
なお、課税所得がいくらまでなら税額が発生しないかは、法人税率、所得の内容、税額控除などによって異なります。「利益がこの金額以下なら必ず0円」と単純に判断することはできません。
税額が0円でも申告は必要
防衛特別法人税で特に注意したいのが、納税額が0円でも申告書の提出が必要になる点です。
次のような場合でも、原則として防衛特別法人税確定申告書を提出します。
- 赤字などにより基準法人税額が0円となる場合
- 基準法人税額が年500万円以下となる場合
- 基礎控除を差し引いた結果、課税標準法人税額が0円となる場合
つまり、「税金が発生しないから何もしなくてよい」という扱いではありません。
法人税の申告とあわせて、防衛特別法人税についても税額を計算し、0円である場合は所定の欄に0円と記載して申告します。
申告書の様式も変わります
防衛特別法人税の創設に伴い、法人税の申告書様式にも変更が加えられています。
主な変更として、「別表一次葉一」と「別表一の二次葉一」が追加されました。これらの様式には、課税標準法人税額や防衛特別法人税額を計算する欄が設けられています。
2026年3月31日以前に開始した事業年度は、防衛特別法人税の課税対象ではありません。この場合、新しい様式を使用して法人税を申告するときでも、防衛特別法人税に関する欄は記載しません。
対象事業年度かどうかを、決算日だけで判断しないことが重要です。
新星パートナーズでの対応状況
新星パートナーズでは、現時点で防衛特別法人税の納税対象となった関与先法人はまだありません。
一方、制度の適用開始に備え、すでに新様式の法人税申告書を使用して法人税の申告を行っています。
現時点で申告しているのは、2026年3月31日以前に開始した事業年度であるため、防衛特別法人税の課税対象ではありません。そのため、新様式のうち防衛特別法人税に関する欄は記載せずに申告しています。
今後、対象となる事業年度の申告が始まった場合にも対応できるよう、申告書の変更点、税額計算、電子申告の実務を確認しながら準備を進めています。
申告期限はいつ?
防衛特別法人税の確定申告期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。通常の法人税確定申告書と同じ時期に申告します。
法人税の申告期限延長の適用を受けている場合は、防衛特別法人税の申告期限も延長された期限になります。
納税額が発生する場合は、申告だけでなく納付の準備も必要です。決算時に法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税などとあわせて資金を確保しておきましょう。
中間申告はいつから?
防衛特別法人税の中間申告は、2027年4月1日以後に開始する課税事業年度から始まります。
法人税の中間申告書を提出する必要がある法人は、防衛特別法人税についても中間申告が必要になる場合があります。
制度開始直後の確定申告と、中間申告の開始時期は異なるため注意が必要です。
中小企業・1人法人が確認しておきたいこと
1.自社の適用開始事業年度
自社の決算月を確認し、2026年4月1日以後に開始する最初の事業年度を特定します。
2.基準法人税額が500万円を超える見込みがあるか
前年の法人税額や今期の利益見込みから、防衛特別法人税が発生する可能性を確認します。ただし、最終的な判定には法人税申告書上の計算が必要です。
3.申告書が新制度に対応しているか
使用している税務申告ソフトが、新様式と防衛特別法人税の電子申告に対応しているか確認します。
4.納税額が0円でも申告する
基礎控除によって税額が0円になる場合でも、対象事業年度であれば申告書の提出が必要です。
5.決算前に資金繰りを確認する
基準法人税額が500万円を超える見込みがある法人は、法人税等に加えて防衛特別法人税の納付資金も見込んでおきます。
よくある質問
防衛特別法人税は、すべての法人が納税するのですか?
いいえ。法人税を課される法人は制度の対象になりますが、年500万円の基礎控除があるため、実際の納税額が0円になる法人もあります。
1人法人は対象外ですか?
対象外ではありません。役員や従業員の人数ではなく、法人税の納税義務と基準法人税額に基づいて判定します。
赤字法人も申告が必要ですか?
対象となる事業年度であれば、基準法人税額が0円の場合でも、原則として防衛特別法人税確定申告書の提出が必要です。
法人税額に一律4%が追加されるのですか?
単純に法人税の納付額全体へ4%を加算する制度ではありません。基準法人税額から年500万円の基礎控除額を差し引き、その残額に4%を掛けて計算します。
2026年中に申告する法人は対象ですか?
申告日ではなく、事業年度の開始日で判断します。2026年3月31日以前に開始した事業年度は、防衛特別法人税の課税対象ではありません。
まとめ
防衛特別法人税は、2026年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
税率は4%ですが、基準法人税額から年500万円の基礎控除額を差し引いて計算するため、多くの中小企業や1人法人では、当面の納税額が0円になる可能性があります。
ただし、納税額が0円でも申告は必要です。
まずは自社の適用開始事業年度を確認し、基準法人税額が500万円を超える可能性があるか、申告に使用するシステムが新様式に対応しているかを確認しておきましょう。
新星パートナーズでは、クラウド会計を利用する中小企業・1人法人の法人税申告と税務相談に対応しています。防衛特別法人税を含む今後の申告について不明な点がある場合は、お問い合わせください。
参考資料
新星パートナーズ会計事務所
代表・税理士 井河 伸郎
税務・会計に関する記事は、専門家の立場から内容を確認しています。
本記事は、一般的な情報の提供を目的としています。個別の取引や税務上の取扱いについては、契約内容や事実関係によって判断が異なる場合があります。また、掲載内容は記事作成時点の情報に基づいています。最新の情報は、各サービスの公式サイトや関係機関の公表資料をご確認ください。

