1人社長の法人でも、経理・税務・社会保険の手続きは一般の会社と同じように発生します。従業員がいないからといって、毎月の記帳、役員報酬に関する源泉所得税、社会保険料、決算・申告などが不要になるわけではありません。
この記事では、1人法人が忘れやすい経理・税務手続きを「毎月」「年1回」「決算月に連動」「随時」に分けて整理します。自社の決算月や給与支給日に合わせて、年間予定表へ登録しておきましょう。
最終確認日:2026年8月14日。実際の期限は会社の決算月、届出状況、自治体、休日等によって異なります。
まず確認する5つの基本情報
会社ごとの期限を決めるため、最初に次の情報を確認します。
- 事業年度と決算月
- 役員報酬の支給日
- 源泉所得税の納期の特例を受けているか
- 消費税の課税事業者か、免税事業者か
- 社会保険・労働保険の加入状況
特に「決算月」と「源泉所得税の納期の特例」の有無によって、年間スケジュールは大きく変わります。設立時の届出書控えや、過去の申告書・納付書を確認してください。
毎月行う経理・税務業務
| 時期 | 主な業務 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 日々・随時 | 領収書・請求書等の保存 | 電子データは電子のまま保存し、取引との対応を明確にする |
| 月初 | 前月分の売上・経費の確認 | 未請求、未入金、未払費用、立替経費を確認する |
| 給与支給時 | 役員報酬・給与計算 | 源泉所得税、社会保険料、住民税を確認する |
| 毎月10日まで | 源泉所得税の納付 | 納期の特例を受けていない場合は、原則として支払月の翌月10日 |
| 月中 | 銀行・カード明細の照合 | 二重計上、私的利用、未処理明細を確認する |
| 月末 | 月次試算表の確認 | 売上、利益、預金残高、税金・社会保険の納付予定を確認する |
証憑は後回しにしない
1人法人では、経営者本人が営業・請求・支払い・経理を兼ねることが多く、領収書や請求書の整理が後回しになりがちです。月末にまとめて探すのではなく、受け取った時点でクラウド会計や保存フォルダへ取り込みます。
電子メールやWebから受け取った請求書・領収書は、原則として電子データのまま保存します。ファイル名や取引先、日付、金額を確認できるよう、社内ルールを決めておくと月次処理が安定します。
銀行・カード明細は登録しただけで終わらせない
クラウド会計に連携した明細は、仕訳として登録される前の候補である場合があります。勘定科目、税区分、取引先、事業利用か私的利用かを確認してから登録します。
領収書から先に取引を登録している場合は、同じカード明細をもう一度支出として登録しないよう、消込や紐付けを行います。
源泉所得税の納付スケジュール
役員報酬や給与、税理士等への一定の報酬から源泉徴収した所得税・復興特別所得税は、会社が期限までに納付します。
| 区分 | 対象期間 | 原則的な納付期限 |
|---|---|---|
| 納期の特例なし | 毎月の支払分 | 支払月の翌月10日 |
| 納期の特例あり | 1月~6月支払分 | 7月10日 |
| 7月~12月支払分 | 翌年1月20日 |
給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者は、承認を受けることで納期の特例を利用できます。自動的に半年納付になるわけではなく、申請と承認状況の確認が必要です。
納付額が0円の場合でも、給与や対象報酬の支払いがあれば、徴収高計算書の送信等が必要になることがあります。
1月に行う主な手続き
- 前年7月~12月分の源泉所得税の納付(納期の特例を利用する場合は原則1月20日)
- 給与支払報告書の提出
- 法定調書合計表・対象となる法定調書の提出
- 償却資産申告書の提出(対象資産がある場合)
給与支払報告書、法定調書、償却資産申告は、通常1月31日が基準となります。期限が土日祝日に当たる場合の扱いや提出先を確認してください。
1人社長自身への役員報酬についても、給与支払報告書の提出対象になるのが一般的です。会社と個人を別の主体として考える必要があります。
7月に行う主な手続き
- 1月~6月分の源泉所得税の納付(納期の特例を利用する場合は原則7月10日)
- 社会保険の算定基礎届
- 労働保険の年度更新(加入している場合)
2026年度の算定基礎届は、7月1日から7月10日までが提出期間です。原則として4月・5月・6月に支払った報酬をもとに、標準報酬月額を見直します。
代表者1名だけの法人でも、社会保険に加入していれば算定基礎届の対象になります。freee人事労務等で届書を作成できる場合でも、内容確認と提出、電子申請の完了確認を忘れないようにします。
年末に行う主な手続き
- 年末調整
- 源泉徴収票の作成・交付
- 翌年分の扶養控除等申告書などの確認
- 固定資産・棚卸資産・未払費用等の決算準備
1人社長であっても、会社から役員報酬を受け取っている場合は年末調整が必要になることがあります。他社給与、医療費控除、住宅ローン控除の初年度など、年末調整だけで完結しない場合は個人の確定申告も検討します。
決算月から申告までのスケジュール
法人税の確定申告は、原則として事業年度終了日の翌日から2か月以内です。消費税の課税事業者も、原則として課税期間終了後2か月以内に申告・納付します。
| 時期 | 主な作業 |
|---|---|
| 決算月の1~2か月前 | 売上・利益見込み、納税額、資金繰り、役員報酬や設備投資の予定を確認 |
| 決算月 | 売上・仕入の締め、棚卸し、固定資産、未収・未払、借入金残高などを確認 |
| 決算後1か月以内 | 不足資料をそろえ、決算整理と申告書作成を進める |
| 決算後2か月以内 | 法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税、対象となる消費税を申告・納付 |
| 申告後 | 決算書・申告書・納付記録を保存し、翌期の予算と資金繰りを更新 |
たとえば3月決算法人では、原則として5月末までに申告・納付します。申告期限の延長制度を利用している場合でも、税金の納付期限が同じように延びるとは限らないため注意が必要です。
随時必要になる手続き
次のような変更があった場合は、年1回の定例手続きとは別に届出が必要になることがあります。
- 本店所在地、商号、代表者等の変更
- 役員報酬の変更
- 賞与の支給
- 従業員の入社・退職
- 社会保険の被扶養者の変更
- 給与が大きく変動した場合の月額変更届
- 消費税の課税方式やインボイス登録に関する届出
- 新しい事業所や支店の開設
役員報酬は、法人税上の損金算入要件との関係から、自由な時期に変更すると税務上の問題が生じることがあります。変更前に税理士へ確認してください。
1人法人が期限管理を安定させる方法
年間カレンダーを作る
決算月、給与支給日、源泉所得税、社会保険、年末調整、法定調書を1つのカレンダーに登録します。法定期限だけでなく、資料を集め始める社内期限も設定します。
月次処理日を固定する
「毎月5日までに証憑を整理」「10日までに前月の会計入力を完了」など、処理日を固定すると、未処理が積み上がりにくくなります。
納税資金を別に管理する
法人税・消費税・源泉所得税・社会保険料は、売上として自由に使える資金ではありません。月次試算表をもとに納付見込みを確認し、納税用口座などで資金を確保します。
クラウド会計と人事労務を連携する
役員報酬、社会保険料、源泉所得税などを連携できると転記作業を減らせます。ただし、連携後の仕訳、税区分、未払計上、納付時の消込は確認が必要です。
年間チェックリスト
| 頻度 | チェック項目 |
|---|---|
| 毎月 | 証憑保存、売上・経費登録、銀行・カード照合、役員報酬、源泉所得税、月次試算表 |
| 1月 | 納期特例の源泉税、給与支払報告書、法定調書、償却資産申告 |
| 7月 | 納期特例の源泉税、算定基礎届、労働保険年度更新(対象時) |
| 年末 | 年末調整、源泉徴収票、翌年書類、決算準備 |
| 決算時 | 棚卸し、固定資産、残高確認、決算整理、法人税・地方税・消費税申告 |
| 随時 | 登記事項、役員報酬、賞与、入退社、社会保険、消費税関連の変更届 |
まとめ
1人法人でも、毎月の会計処理、源泉所得税、社会保険、年末調整、法定調書、決算申告など、多くの期限があります。忙しい時期に思い出して処理するのではなく、年間カレンダーと月次の締め日を決めることが重要です。
まずは決算月、役員報酬の支給日、源泉所得税の納期の特例、消費税、社会保険の状況を確認し、自社用のスケジュールを作りましょう。判断が必要な届出や役員報酬の変更は、実行前に税理士等の専門家へ相談してください。
参考:国税庁「源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」、国税庁「消費税の申告と納税」、日本年金機構「算定基礎届」
新星パートナーズ会計事務所
代表・税理士 井河 伸郎
税務・会計に関する記事は、専門家の立場から内容を確認しています。
本記事は、一般的な情報の提供を目的としています。個別の取引や税務上の取扱いについては、契約内容や事実関係によって判断が異なる場合があります。また、掲載内容は記事作成時点の情報に基づいています。最新の情報は、各サービスの公式サイトや関係機関の公表資料をご確認ください。

