ホームページをリニューアルするにあたり、最も時間をかけたのは、色やレイアウトを決めることではありませんでした。
前回の記事「AIと対話しながら会計事務所のホームページをリニューアルした実録|企画から公開後の修正まで」では、企画から公開後の修正まで、リニューアル全体の流れを紹介しました。
一番難しかったのは、新星パートナーズ会計事務所が「誰に、何を、どこまで提供するのか」を整理し、サービスとして分かりやすく表現することでした。
リニューアル前のサイトにも、税務顧問、会計入力、給与計算、法人税申告などの説明はありました。しかし、サービス同士の違いや、どのような会社に向いているのかが、十分に伝わる構成にはなっていませんでした。
そこで今回は、AIと対話しながら既存業務を洗い出し、次の3つのサービスへ整理しました。
- つばめバックオフィス
- ふくろうクラウド顧問
- はやぶさオンライン
この記事では、3つのサービスがどのように生まれ、料金や提供範囲をどのように具体化していったのかを紹介します。
最初から3つのサービスがあったわけではない
リニューアル前から、当事務所では税務会計顧問、会計入力、給与計算、年末調整、法人税申告などを行っていました。
ただし、ホームページ上では、それぞれの業務が個別に並んでいる状態でした。
利用者から見ると、次のような疑問が残ります。
- 自社にはどのサービスが合うのか
- 記帳や給与計算まで依頼できるのか
- 決算や申告の料金は別に必要なのか
- 相談や会計チェックは、どの程度含まれるのか
- freee会計やマネーフォワード会計を使っている場合、どこまで対応してもらえるのか
業務内容を詳しく書くだけでは、サービスを選びやすくなるとは限りません。
そこで、業務の種類から考えるのではなく、「どのような会社が、どのような状態になることを目指すのか」という視点から整理し直しました。
まず「誰に向けたサービスか」を決めた
AIとの対話では、これまで提供してきた業務を一つずつ書き出し、対象となる会社、利用するクラウド会計、依頼できる作業、料金の決め方などを整理しました。
その結果、利用者の状況は大きく3つに分けられることが分かりました。
経理や給与までまとめて任せたい1人社長
1人で会社を経営していると、請求書、経費、給与、振込、会計入力、税務申告などの業務が社長本人に集中します。
こうした会社には、税務顧問だけでなく、日常のバックオフィス業務までまとめて支援するサービスが必要です。
これが「つばめバックオフィス」になりました。
クラウド会計を使いながら税務・会計の支援を受けたい会社
自社でfreee会計またはマネーフォワード会計へ入力し、税理士には会計チェック、税務相談、決算・申告を依頼したい会社もあります。
一方で、入力まで依頼したい会社や、予算作成などを追加したい会社もあります。
そこで、税務会計顧問を基本にし、必要な業務を追加できる形に整理したのが「ふくろうクラウド顧問」です。
顧問契約ではなく法人税申告を依頼したい会社
日常の経理は自社で進められるものの、決算と法人税申告は税理士へ依頼したい会社もあります。
この需要に対応するサービスが「はやぶさオンライン」です。
オンラインで資料をやり取りし、法人税申告を進めるサービスとして位置付けました。
既存の「はやぶさ」に「つばめ」と「ふくろう」を加えた
「はやぶさ」という名称は、今回のリニューアル前から、法人税申告のサービス名として使用していました。
はやぶさは飛ぶ速さで知られる鳥です。このサービスでも、オンラインで効率よく資料をやり取りし、申告まで速やかに進めることを重視しています。その特徴を表す名称として、「はやぶさ」を引き続き使用することにしました。
今回のリニューアルでは、既存の「はやぶさ」に、新たに「つばめ」と「ふくろう」を加え、3つの鳥の名称でサービスを統一しました。
つばめバックオフィスでは、1人社長が抱える経理や給与などの負担を軽くすることを特に意識しました。そこで、軽やかに飛ぶ姿をイメージし、「つばめ」という名称に決めました。
ふくろうクラウド顧問では、静かさ、慎重さ、丁寧さをイメージしました。会計データを慎重に確認し、税務や経営について丁寧に支援するサービスの姿勢を表す名称として、「ふくろう」を選びました。
名称だけでサービス内容のすべてを説明することはできません。しかし、料金や業務名だけを並べるよりも、それぞれの役割を覚えてもらいやすくなります。
- つばめ:経理や給与など、日々のバックオフィスの負担を軽くする
- ふくろう:会計データを慎重に確認し、税務や経営を丁寧に支援する
- はやぶさ:オンラインを活用し、申告まで速やかに進める
ホームページでは、3羽のイラスト、色、説明文をそろえ、同じ事務所が提供する一体的なサービスであることも表現しました。
料金を決めるには、提供範囲を先に決める必要があった
料金表を作る作業では、単に金額を決めればよいわけではありませんでした。
例えば、会計入力を含むサービスであれば、次の点を決めなければ料金を表示できません。
- 月に何仕訳まで含むのか
- 上限を超えた場合はいくらか
- 給与や年末調整は含むのか
- 決算・法人税申告料は月額に含むのか
- 消費税申告は別料金か
- 資料の提出期限はいつか
- 内容が分からない入出金をどう処理するか
- 従業員が増えた場合はいくらか
AIに料金案を任せたのではありません。実際の作業時間、責任範囲、これまでの経験、利用者にとっての分かりやすさを踏まえ、最終的な条件と金額は私が判断しました。
AIが役立ったのは、条件を一覧にし、矛盾や抜けを見つける作業です。
一つの条件を決めると、「その場合はどうするのか」という新しい論点が出てきます。AIとの対話を繰り返すことで、頭の中にあった実務上のルールを文章にすることができました。
「何をするか」だけでなく「何をしないか」も明確にした
サービスを分かりやすくするには、含まれる業務だけでなく、含まれない業務や利用条件も明示する必要があります。
例えば、つばめバックオフィスは、原則として従業員のいない1人社長法人を対象とし、freee会計とfreee人事労務の利用を前提にしました。
ふくろうクラウド顧問は、freee会計またはマネーフォワード会計を利用している会社、または今後利用する会社を対象としました。会計チェックはクラウド会計上のデータを中心に行い、原則としてすべての証憑との照合を行うものではありません。
また、はやぶさオンラインでは、業務が集中する時期を考慮し、11月・12月・3月決算の会社を対象外としました。
こうした条件は、営業上は書きにくい内容かもしれません。しかし、契約後の認識違いを防ぐためには重要です。
「依頼できると思っていた」「料金に含まれると思っていた」という行き違いを減らすことも、サービス設計の一部だと考えました。
AIとの対話で、暗黙のルールが文章になった
実務では、経験に基づいて自然に判断していることが多くあります。
しかし、それをホームページで説明しようとすると、言葉にできていない部分が見えてきます。
例えば、資料の提出が遅れた場合の報告時期、質問に回答がない入出金の処理、会計データ移行の範囲、不動産売買のように通常より確認が多い取引の扱いなどです。
AIは、私が入力した条件を基に、関連する論点を並べたり、別ページとの表現の違いを見つけたりすることに向いていました。
一方で、税務上の責任、実際の作業負担、採算性、顧客との関係まで理解して、サービス内容を決定できるわけではありません。
AIが整理し、人が判断する。この分担を繰り返すことで、サービスの輪郭が少しずつ明確になりました。
ホームページの制作が、事務所の業務整理にもなった
今回のリニューアルは、既存のサービスを見栄えよく掲載し直すだけの作業ではありませんでした。
誰を対象にするのか、何を基本サービスにするのか、何を追加サービスにするのか、どこから別料金になるのかを一つずつ決めることになりました。
その結果、ホームページだけでなく、事務所内部の業務ルールや説明方法も整理されました。
ホームページを作ることは、事業の内容を外部へ伝える作業です。同時に、自分たちが提供している価値と責任範囲を見直す機会にもなります。
まとめ
新星パートナーズ会計事務所では、リニューアルを機に、サービスを次の3つへ整理しました。
- 1人社長の経理・給与・税務をまとめて支援する「つばめバックオフィス」
- クラウド会計を基盤に税務会計顧問と必要な追加業務を提供する「ふくろうクラウド顧問」
- 顧問契約を前提とせず、オンラインで法人税申告を行う「はやぶさオンライン」
AIとの対話は、サービスを自動的に作ってくれるものではありませんでした。
役立ったのは、業務を分解し、条件を比較し、抜けや矛盾を見つけることです。そして、AIが整理した内容を基に、実際のサービスとして成立するかを人が判断しました。
次回は、整理したサービスをホームページ上でどのように見せたのか、デザイン、文章、静的な事務所サイトとWordPressの「はくちょうジャーナル」を一体的に運営する構成について紹介します。
新星パートナーズ会計事務所
代表・税理士 井河 伸郎
税務・会計に関する記事は、専門家の立場から内容を確認しています。
本記事は、一般的な情報の提供を目的としています。個別の取引や税務上の取扱いについては、契約内容や事実関係によって判断が異なる場合があります。また、掲載内容は記事作成時点の情報に基づいています。最新の情報は、各サービスの公式サイトや関係機関の公表資料をご確認ください。

