新星パートナーズ会計事務所では、サービス内容の見直しに合わせて、見積書、業務条件書、税理士業務委任契約書を作成・改訂しました。
今回の作業に利用したAIは、具体的にはChatGPT ワークです。2026年8月に行ったホームページのリニューアルに続き、契約時に使用する書類の作成・改訂も、ChatGPT ワークと対話しながら進めました。
ただし、ChatGPT ワークに契約条件をすべて決めてもらったわけではありません。最初に文書のたたき台を作成してもらい、以前から使用していた書類も参照しながら改善案を出してもらったうえで、事務所側で内容の過不足を調整しました。
この記事では、ホームページで整理したサービス内容を契約関係書類へ落とし込み、実際に使用できる文書へ仕上げていった過程を紹介します。
ホームページのリニューアルから契約書類の作成へ
2026年8月、新星パートナーズ会計事務所は、ChatGPT ワークを活用してホームページを全面的にリニューアルしました。
リニューアルにあたり、これまで提供していたサービスを次の3つに整理しました。
- 1人社長法人向けの「つばめバックオフィス」
- 税務会計顧問サービスの「ふくろうクラウド顧問」
- オンライン法人税申告サービスの「はやぶさオンライン」
ホームページを作る過程では、それぞれのサービスについて、対象となる会社、提供する業務、料金、対応方法などをChatGPT ワークと一緒に整理しました。
そのため、契約関係書類の作成を始めた段階で、サービスの基本的な内容はすでに整理されていました。そこで最初に、細かな追加条件までは規定せず、ホームページで整理した内容をもとに、契約書と見積書のたたき台をChatGPT ワークに作成してもらいました。
業務条件書の追加はChatGPT ワークからの提案
契約書と見積書の作成を進めるなかで、ChatGPT ワークから「業務条件書を別に設けてはどうか」という提案がありました。
見積書は、依頼する業務と料金を確認するための書類です。一方、契約書は、契約期間、委任する業務、責任、解除など、契約関係の基本事項を定めます。
しかし、実際の業務では、資料の提出期限、相談方法、基本料金に含まれる回数、追加料金が発生する条件など、契約書や見積書だけでは整理しにくい細かな条件があります。
これらをすべて契約書に書き込むと、契約書が長くなり、サービス内容を変更するたびに契約書全体の見直しが必要になります。一方、見積書だけでは、日常の業務を進めるための条件を十分に説明できません。
そこで、基本的な契約関係は税理士業務委任契約書、料金の概要は見積書、サービスごとの詳しい運用条件は業務条件書で確認する構成にしました。
| 書類 | 主な役割 |
|---|---|
| 見積書 | 依頼する業務と料金の概要を確認する |
| 業務条件書 | 業務範囲、期限、回数、追加料金などの詳しい条件を確認する |
| 税理士業務委任契約書 | 契約期間、委任業務、責任、解除などの基本事項を定める |
ホームページとサービスの仕様を一緒に作っていたことが土台になった
今回、最初の段階から一定の内容を備えた契約書、見積書、業務条件書を作ることができたのは、ChatGPT ワークと一緒にホームページのリニューアルを進め、各サービスの仕様を細かく詰めていたためです。
ホームページを作る過程では、単に紹介文を書いただけではありません。対象となる会社、基本料金に含まれる業務、対象外となる業務、追加料金、資料の提出期限、面談や相談の方法などについて、実際の業務を想定しながら整理していました。
その内容がChatGPT ワークとのやり取りのなかに蓄積されていたため、契約関係書類の作成に移ったときも、サービス内容を最初から説明し直す必要がありませんでした。
ホームページと契約関係書類を別々に作るのではなく、同じサービス仕様を土台として作成できたことは、記載内容の不一致を減らすうえでも役立ちました。
以前から使用していた契約書と見積書も参照
最初のたたき台を作成した後、ホームページのリニューアル前から使用していた契約書と見積書をChatGPT ワークへアップロードし、新しく作成した書類と比較してもらいました。
以前の書類には、これまでの実務を通じて追加してきた条件や、実際の契約で必要となる事項が含まれています。新しい書類だけを見ていると、それらを見落とす可能性があります。
そこで、以前の書類にあって新しい書類にはない内容、新しいサービスに合わせて変更した方がよい内容、重複している内容などを洗い出し、改善案を出してもらいました。
改善案をもとに過不足を調整
ChatGPT ワークから提示された改善案を、すべてそのまま採用したわけではありません。
提案された条項や条件について、実際の業務に必要か、事務所の運用と一致しているか、依頼者にとって分かりにくい表現になっていないかを一つずつ確認しました。
不足している内容は追加し、細かすぎる内容や実際の運用に合わない内容は削除しました。また、契約書、見積書、業務条件書のどの書類へ記載するのが適切かについても調整しました。
この作業を繰り返すことで、AIが作った一般的な文書のたたき台から、新星パートナーズ会計事務所のサービスと実際の業務に合った書類へ近づけていきました。
条件を最終的に決めるのは人
文書作成でAIを利用するときも、業務内容や契約条件を最終的に決めるのは人です。
今回、事務所側で確認し、決定したのは主に次の事項でした。
- サービスの対象となる会社
- 基本料金に含まれる業務
- 対象外となる業務
- 追加料金が発生する条件
- 会計資料などの提出期限
- 面談や相談の方法
- 納品物と提供時期
- 最低利用期間
- 契約を終了する場合の取扱い
これらを曖昧なままAIへ文書作成を依頼しても、実際の業務に合った書類にはなりません。
AIは、決まっていない条件を適切に決定してくれるものではないからです。AIから提案を受けることはできますが、その提案が実際の業務に合っているかを人が判断し、書類へ正確に反映させる必要があります。
ChatGPT ワークが役立った4つの作業
今回使用したのは、文章について対話するだけの使い方ではありません。実際のWord文書をChatGPT ワークで確認しながら、文章、書式、書類間の整合性を段階的に見直しました。
特に役立ったのは、次の4つの作業です。
1.書類間の表記をそろえる
同じ業務について、見積書では「決算申告」、業務条件書では「法人税申告」、契約書では「税務申告書の作成」と書かれていると、範囲が同じなのか分かりにくくなります。
ChatGPT ワークを使って複数の書類を比較し、同じ内容を異なる言葉で表している箇所を洗い出しました。
ただし、すべてを同じ表現にすればよいわけではありません。書類ごとの役割に合わせて表現を変える必要がある箇所は、その理由を確認したうえで残しました。
2.記載漏れや矛盾を探す
サービス内容を細かく決めるほど、書類間の不一致が起こりやすくなります。
例えば、次のような点です。
- 見積書と業務条件書で料金が一致しているか
- 基本料金に含まれる業務が統一されているか
- 追加料金の条件が抜けていないか
- 資料の提出期限と業務の完了時期に矛盾がないか
- 対象外となる業務が明確になっているか
ChatGPT ワークには、文章を作るだけでなく、複数の文書を照合する役割も持たせました。
人が1文ずつ読み比べる場合とは異なる視点で確認できるため、チェック項目を洗い出す補助として有効でした。
3.複数の書類へ展開する
同じサービスでも、利用する会計ソフトや業務範囲によって書類が分かれる場合があります。
今回の改訂では、基本となる書類を作成した後、条件の違いに応じた複数の版へ展開しました。
ChatGPT ワークを使うと、変更する箇所と共通して残す箇所を整理しやすくなります。ただし、一括して書き換えると、変更する必要のない部分まで変わることがあります。
そのため、版ごとの差分を最後に一覧で確認しました。
4.文章とレイアウトを整える
内容が固まった後は、読みやすさも確認しました。
実際の作業では、次のような細かな修正も行っています。
- 見出しの位置
- 文章の行間
- 表の幅と改ページ
- お客様名を記入する欄
- 事務所名の表示位置
- フッターのページ番号
- WordからPDFへ変換したときの崩れ
ChatGPT ワークでは、Word文書を作成・修正し、修正版をファイルとして確認できました。実際に文書を開き、文字の大きさ、行間、表の配置、改ページ、記入欄などを確認し、気になった点を伝えて再修正する作業を繰り返しました。
ただし、Word上では整って見えても、PDFへ変換すると改ページや余白が変わることがあります。そのため、完成までには、出力されたファイルを人が目で確認する工程が欠かせませんでした。
AIだけでは判断できなかったこと
一方で、AIに任せられない部分も多くありました。
特に、人が判断したのは次のような内容です。
- どの業務を受任するか
- 基本料金に何を含めるか
- どの条件で追加料金を請求するか
- 資料の提出が遅れた場合にどう対応するか
- 事務所と依頼者の責任をどう分けるか
- 契約を終了できる条件
- 実際の事務所運営で守れる内容になっているか
AIが整った文章を提示しても、その内容が事務所の実際の運用と一致しているとは限りません。
また、一見もっともらしい条項でも、そのまま使用できるとは限りません。契約内容や法的な意味を理解した人が、最終的に判断する必要があります。
文書作成でAIを使うときに注意したこと
顧客情報を入力しない
AIへ文書を入力するときは、会社名、代表者名、住所、メールアドレスなど、顧客を特定できる情報を含めないようにしました。
契約書のひな型を確認するときも、実際の契約書ではなく、個別情報を除いた状態で扱うことが重要です。
AIが作った文章をそのまま使わない
AIが作成した文書には、実際の業務に合わない条件や、意図していない表現が含まれる場合があります。
文章として自然に見えることと、契約条件として適切であることは別です。
条項ごとに内容を確認し、事務所の運用と一致しない部分は修正しました。
書類を1つずつではなく相互に確認する
見積書だけ、契約書だけを個別に確認しても、書類間の矛盾には気付きにくくなります。
今回は、3種類の書類をまとめて比較し、料金、業務範囲、期限、用語などが一致しているかを確認しました。
複数の関連文書を横断して確認できる点は、AIを利用するメリットの一つだと感じました。
AIは契約条件を決める人ではなく、整理を支援する道具
今回の作業を通じて、AIは、見積書や契約書を自動的に完成させる道具というより、決定済みの内容を整理し、書類間の不一致を探すための道具として役立つと感じました。
特に効果があったのは、次のような作業です。
- 長い文章を読みやすく整理する
- 複数の書類から表記の違いを探す
- 記載漏れの可能性を洗い出す
- 基準となる書類から複数の版を作る
- 修正前後の違いを確認する
一方、業務の範囲や料金、責任、契約条件は、AIではなく事業者自身が決めなければなりません。
AIへ任せる部分と、人が判断する部分を分けることが、実務で安全に活用するためのポイントです。
まとめ
新星パートナーズ会計事務所では、サービス内容の見直しに合わせて、見積書、業務条件書、税理士業務委任契約書を作成・改訂しました。
AIは、書類のたたき台の作成、業務条件書の提案、以前の書類との比較、書類間の表記統一、記載漏れの確認、複数版への展開、文章やレイアウトの整理などに活用しました。
今回、一連の作業を比較的スムーズに進めることができたのは、その前段階となるホームページのリニューアルからChatGPT ワークと一緒に取り組み、各サービスの内容や仕様を細かく整理していたためです。
ホームページと契約関係書類を別々の作業として考えるのではなく、ホームページで整理したサービス仕様を、見積書、業務条件書、契約書へ順に展開できました。同じAIとのやり取りを継続したことで、サービス内容を最初から説明し直す作業も少なくなりました。
ただし、サービス内容、料金、責任範囲などの重要な条件は人が決定し、完成した書類も最終的に人が確認しています。
AIを使えば、契約関係の文書を無確認で作成できるわけではありません。人が決めた内容を整理し、見落としや書類間の不一致を減らす補助として利用することで、文書作成の負担を軽くできると考えています。
新星パートナーズ会計事務所
代表・税理士 井河 伸郎
税務・会計に関する記事は、専門家の立場から内容を確認しています。
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